明日は待ちに待った遠足です。あきら君は、以前はバスに乗るといつも酔ってつらい思いをしていましたが、去年座席を車の進行方向の景色がよく見える場所にしてもらったり、前の日の睡眠を十分にとったら大丈夫でした。その後、体操部に入って鉄棒や器械体操をするようになってからは、すっかり乗り物酔いはしなくなりました。
1)乗り物酔いとはどういうものですか?
乗り物に乗ると、顔面が青白くなり、気分が悪くなったり、吐いてしまうことがあります。これは乗り物の揺れが原因で、乗り物酔い(動揺病〈どうようびょう〉)と言います。乗り物の種類により、車酔い、船酔い、空酔い、宇宙酔いとも言われています。ブランコや遊園地のジェットコースターなどでもおこります。
幼児や高齢者は酔いにくく、小学校入学後から酔いやすくなり、高学年になるにつれて多くなります。小中学校の児童・生徒の30~40%、女子の方が男子より多いという統計があります。
2)なぜ乗り物酔いはおこるのですか?
人のからだには倒れたりしないように、自動的に姿勢を保つ調整機能(反射)があり、これを平衡機能〈へいこうきのう〉といいます。この働きには内耳にある前庭〈ぜんてい〉や半規管という器官が重要な役をしています。乗り物に乗って、発進・停止の反復、スピードの変化、前後・左右・上下(最も酔いやすい刺激)・回転などの刺激を内耳が受けると、その情報が脳へ送られるのですが、慣れない刺激がくり返されると情報過多となり、脳が混乱して、自律神経に異常な信号を送ってしまいます。そうすると、生あくび、生つば、冷や汗、顔面蒼白、手足の冷感、気持ち悪さなどをおこし、ついには吐くなどの症状が出てしまうのです。
3)バスの前の方の席で車の進行方向の景色を見ていると酔いにくいと言われましたが、なぜですか?
自動車を運転する人はまず酔うことはありません、これは車の進行方向を意識して自然にからだがそれに対応しているからです。後ろの席でどのようにゆれるかわからない受身の状態だと酔いやすいのです。ですから、進行方向がはっきりと見える座席にすわると酔いにくくなります。
乗り物酔いは、ほかにも疲労や睡眠不足などの体調不良や汚れた空気、不快な温度や湿度、さらにはガソリン、ペンキなど異常なにおいや音などでもおきやすくなります。また一度乗り物酔いでいやな経験をすると、それを思い出してまた酔いやすくなることもあります。
4)乗り物酔いをしなくなるような訓練はありますか?
日ごろからブランコ、すべり台、シーソー、鉄棒、自転車、マット運動など、からだの前後、左右、あるいは回転などあらゆる方向の動きに慣れるためにいろいろな運動をすることが大切です。積極的に乗り物に乗り、少しずつ慣らすことも効果があります。
乗り物のスピードの変化や揺れが、からだにとって適度なものであれば「快い酔い」を感じ、乗り物は楽しいものとなります。
5)もうすぐバスでの遠足があるのですが、乗り物酔いの予防にはどうしたらよいでしょうか?
乗り物酔い予防には次のことを守りましょう。
○ 前の日はよく眠る。食べすぎをしない。
○ バスは前から4・5番目の席、船は中央部に乗る。
○ 乗り物内の換気をよくし、いやなにおいがこもらないようにする。
○ 本を読まない。遠くの景色を見る。
○ 気分をまぎらわすため、歌をうたったり、ゲームをする。
○ 必ず乗り物に酔う子どもは、校医や主治医の先生に相談して酔い止めの薬を飲んでおく。
6)乗り物に酔ってしまったらどうするのがよいのでしょうか?
乗り物からおりてしまうのが最もよい方法ですが、できない場合は横になって、ベルトや衣服をゆるめ、腹式深呼吸〈ふくしきしんこきゅう〉をさせます。頭部を冷やしたり、室内の換気をよくしてあげてください。乗り物酔いであれば間もなく回復します。
<日本耳鼻咽喉科学会HPより抜粋>