みのる君は学校で聴力検査を受けた結果、耳鼻科に行くように言われました。自分では聞こえがわるいとは思っていませんでしたし、まわりの人も気がつきませんでした。耳鼻科でくわしい検査を受けたところ、本当の難聴ではなく、こころのトラブルからくる心因性難聴〈しんいんせいなんちょう〉との診断でした。カウンセリングをうけ、友人とのトラブルで悩んでいたことをカウンセラーの先生に話したら、それからすっきりとして、聴力検査の結果も正常になりました。
1)子どもの「こころの健康」が、大きな問題となっていますが、耳鼻科関係では、「こころ」の問題からどのような症状がでることがあるのでしょうか。
「こころ」の問題からおこる病気のことを「心因性疾患」といいますが、耳鼻科関係では、心因性の難聴、失声症〈しっせいしょう〉、咳嗽〈がいそう〉(せき)、めまいや疼痛〈とうつう〉(痛み)などがあります。
多くの耳鼻咽喉科の学校医は、このような心因性疾患を診療した経験をもっています。
2)心因性難聴とはどんな病気なのですか。
心因性難聴は耳には原因となる病気がなく、こころが原因でおこる難聴です。自覚症状がなくて日常生活でも気づかれずに、定期健康診断の聴力検査で、はじめて疑われる場合と、「耳の中で音がする」とか「耳が聞こえない」などの訴えで耳鼻咽喉科を受診して診断される場合とがあります。この両方を合わせると、小中学生で1万人に5~8人くらいです。男子より女子に多く、年齢的には6~12歳に多くみられます。
多くの耳鼻咽喉科の学校医は、このような心因性疾患を診療した経験をもっています。
3)健康診断で見つかる心因性難聴の特徴は?またその原因は何が考えられるのでしょうか。
心因性難聴の子どもの多くは日常生活に何の訴えもなく、親や周囲の人も聞こえがわるいことには気づかず、ほとんどが健診の聴力検査ではじめてわかるという特徴があります。そのうち7割近くは、背景に子どもをとりまく環境からくるストレス(外因子)と、子ども自身の性格(内因子)との関係で難聴がおこると考えられます。大半の子どもが環境に適応できても、一部の子どもは適応に時間がかかったり、適応できにくいため症状がでるのではないかと考えられています。
4)心因性難聴の原因となるストレスとして、具体的にはどのようなものがありますか。
学校生活と家庭での問題に関することが大部分です。学校生活に関することでは、学習、友人関係、転校やいじめなどさまざまです。具体的には「担任がかわった」「クラスがえがあった」「クラスの雰囲気になじめない」など比較的単純な原因から、「いじめ」など深刻な原因までさまざまです。
家庭での問題では、両親の離婚、親子関係、兄弟関係などさまざまです。単身赴任で父が不在がち、進学問題で親と意見があわない、手のかかる兄弟がいてかまってもらえない、逆に親のかまいすぎなどがしばしば誘因になっています。ほかには、自身の病気のこと、塾・けいこ事などが負担になっているということもあります。問題が複雑にからみあっている場合も多く、どうしても原因を把握できない場合も3割くらいあります。
<日本耳鼻咽喉科学会HPより抜粋>